目次
はじめに
この1〜2年で急激に脚光を浴びるようになったAIをみなさんは活用されているでしょうか?
本記事では、海外出張におけるAI、特に生成AIを翻訳作業に活用する方法を中心にまとめたいと思います。
生成AI以外のAIについてのメモ
AIが活用されている領域
生成AIの話題に入る前に、これまでにもあったAIについておさらいしておきましょう。
私と同じくらいの世代だと古くはドラクエIIIでAI戦闘が搭載され、大人になってからもそのイメージを持ったままという方も少なくないかもしれませんね。
実際のところ、AIに関する研究はかなり古くから行われていて、様々な分野で活用されています。
海外出張にも関連しますが、次の様なアプリにもAIが利用されています。
- 翻訳アプリ
- 配車系のアプリ
- カメラアプリ
これらのアプリの中ではAI機能があり、大量のデータを学習して、ユーザーが求める答え(サービス)を提供してくれるようになっています。
当サイトをご覧いただいているような初めてベトナムに出張に行かれる方や、まだ数回くらいしかベトナムに行ったことがないという方ですと(1)や(3)を利用される機会が多いかもしれません。
(3)のカメラアプリというのは、スマホのカメラで文字を写すと、自動的に日本語やその他の言語に翻訳されるという機能です。(文字認識と翻訳機能の合わせ技という感じでしょうか)
本記事では(3)は取り上げませんが、いずれ別の記事にて(3)についても取り上げてみたいと思います。
生成AIの活用
前項で示したようなアプリのように決まったタスクを処理するタイプのAIも実際大活躍しており、
私たちもその恩恵にあずかっています。
一方で、最近巷で脚光を浴びている生成AIというのは、それらとは全く違ったAIの応用例になりますね。
以下では、この生成AIを利用した翻訳作業について情報共有したいと思います。
翻訳作業への活用
海外出張において、生成AIが最も活躍する場面の一つは「翻訳」作業です。
ピンとこない方も多いかもしれませんね。
「『翻訳』なら、Google翻訳を使えば良いのではないか?」
という意見を持たれる方も多いかもしれません。
しかし、実は生成AIを利用した方が良い場合があります。
それは文脈が重要な意味を持つ時。
一般的な翻訳アプリで注意が必要な場合
Google翻訳は、入力した単語や文章を一般的な意味として翻訳してくれるツールです。
そのため、不特定多数がどの様なシチュエーションに対しても利用することができ、平均的な翻訳を返してくれます。
入力する内容自体に、シチュエーションの肉付けがされている場合は、ある程度その内容に沿った文章に翻訳してくれるのが、優秀だなと思えるところではあります。
しかし、あまり一般的ではない専門用語が使われている時や、文章の持つシチュエーションが文章上に現れていない場合は、意図したような翻訳にはなりません。
また、日本語と英語、日本語とフランス語など比較的よく使われているであろう言語間の翻訳は学習量が多いためか、翻訳精度も高い傾向にあります。
これは皆さんもご経験があるのではないでしょうか?
しかし、ベトナム語については英語や他の言語と比べるとまだまだ学習量は足りないのではないかと思います。
生成AIが翻訳に有効である理由
そこで活躍するのが生成AIです。
生成AIの中でもベトナム語の学習ができているものであれば、どれでも優秀な翻訳家・通訳者になってくれるでしょう。
生成AIの場合、チャットの前後の短期記憶も可能です。
また翻訳の際に、シチュエーションを添えた上で、翻訳文を与えることができるため、そのシチュエーションに沿った翻訳になるというわけです。
適切な単語をチョイスしてくれるため、かなり良い翻訳になります。
それでも、油断していると一般的な翻訳文になってしまい、ちょっとニュアンスの異なる文章になることもないわけではないですが…(^^;
生成AIを使った翻訳手順
具体的に生成AIを使った翻訳の手順をまとめておきたいと思います。
まず前提ですが、私はChatGPTを有料会員として使用しています。
現在、ChatGPTでは全ユーザーがChatGPT-4oを使用できる様になっているはずなので、無料会員でも同じくらいの精度で翻訳を依頼することができると思います。
ちなみに2024年5月のアップデートからは無料会員でもChatGPT4を利用できる様になりました。
ChatGPT4でも十分に良い翻訳をしてくれていたので、無料会員の方も安心して翻訳を任せることができますよ。
日本人は、もともと文脈を読み取る技術に長けている民族(だと思っている)なので、恐らくベトナム語から日本語に翻訳された文章は、そのシチュエーションを考慮した上で適切に理解できるのではないでしょうか?
そのため、以下では日本語からベトナム語へと翻訳することを前提に話を進めたいと思います。
翻訳の依頼方法(簡単な文章)
まずは基本の使い方です。
これは単純に次のようにプロンプトで打てば大丈夫です。
以下の内容をベトナム語に翻訳してください。
夜の9時に空港へ行き、チェックインをしたいです。
すると、
Tôi muốn đến sân bay lúc 9 giờ tối và làm thủ tục check-in.
と翻訳してくれます。
ちなみに、Google翻訳の場合は次の様に翻訳してくれます。
Tôi muốn đến sân bay lúc 9 giờ tối và làm thủ tục.
ほぼ同じですが、最後の「check-in」がないですね。
恐らく、ベトナム語的には「sân bay」と「thủ tục」があることで「チェックイン」という意味になるため、省略されているのだと思います。
ただ、「thủ tục」という表現自体は「手順/手続き」という意味ですので、少し曖昧なわけです。
そういう観点からChatGPTではその部分を補ってくれているのでしょう。
長い文章の場合(メール文を翻訳)
次に取引先のベトナム人スタッフに送るメールを翻訳してもらうことを考えましょう。
次の文章をベトナム語に翻訳してください。適した形に翻訳していただけますでしょうか?
***
○○様
お世話になっております。
来週の土曜日、午前8時より4時間の間システムの更新作業を行います。
ご不便をおかけしますが、その間システムを使用できません。
ご了承ください。
よろしくお願いします。
これをChatGPTにて翻訳すると、次の様になります。
Kính gửi ông/bà ○○,
Xin cảm ơn ông/bà đã luôn hỗ trợ chúng tôi.
Vào thứ Bảy tuần tới, từ 8 giờ sáng đến trong vòng 4 tiếng, chúng tôi sẽ tiến hành cập nhật hệ thống.
Trong thời gian này, hệ thống sẽ không thể sử dụng được. Chúng tôi xin lỗi vì sự bất tiện này.
Xin ông/bà thông cảm.
Trân trọng cảm ơn.
一方、Google翻訳は次になります。
Ông○○
Chúng ta trở nên mắc nợ.
Thứ Bảy tuần sau, chúng tôi sẽ cập nhật hệ thống trong 4 giờ bắt đầu từ 8 giờ sáng.
Chúng tôi xin lỗi vì sự bất tiện này nhưng hệ thống sẽ không hoạt động trong thời gian này.
lưu ý điều đó.
Cảm ơn.
もちろん、Google翻訳のベトナム語も十分に理解できますが、ChatGPTのベトナム語の方が自然なベトナム語に近い感じがします。(私が読んでもそう思います)
文脈の追加で翻訳は変わります
ちなみに、ChatGPTに上記の日本語が「ユーザーのベトナム人に宛てたメールである」という旨をプロンプトで追加し、生成をしなおしてもらった場合どうなるかを示したのが以下になります。
上記の翻訳の後で、次のようにプロンプトで指示をすればOKです。
上記の内容はユーザーのベトナム人スタッフに送るメールの本文です。
適した形に翻訳していただけますでしょうか?
上記の一言を追加すると次の様に翻訳しなおしてくれます。
Anh/Chị ○○,
Cảm ơn anh/chị đã luôn hỗ trợ chúng tôi.
Vào thứ Bảy tuần tới, từ 8 giờ sáng đến trong vòng 4 tiếng, chúng tôi sẽ tiến hành cập nhật hệ thống.
Trong thời gian này, hệ thống sẽ không thể sử dụng được. Chúng tôi xin lỗi vì sự bất tiện này.
Mong anh/chị thông cảm.
Trân trọng cảm ơn.
文章の根幹部分はほぼ変わり無いのですが、全体的に柔らかい形になりました。
「ông/bà ○○」という表現が「Anh/Chị ○○」に変わりましたが、これは普段私が客先に送るメールで「Anh/Chị」を使っているからだと思います。
(最近実装された「メモリ機能」に記録されている内容が反映されたのかもしれません。)
翻訳精度を上げるコツ
翻訳精度を上げるためには、翻訳対象の日本語(あるいは、その他の言語)で書かれた文章の前後で、次のような情報をAIに与えると良いと思います。
- 文の目的
- 文の読み手
- 文の持つ背景(メールであれば、メールを送らないといけない理由、専門用語があれば、その説明など)
- 場合によっては、自分(送り手)と相手(読み手)との関係性
ちょうど一昨日あったことなのですが、「ライセンス」という単語を含む文章を翻訳してもらいました。
しかし、その翻訳文のライセンスは、「giâý phép」というベトナム語になっていました。これは投資ライセンスや労働許可証などに対して使われる単語です。
ChatGPTは、そういう意味での「ライセンス」として文章を解釈した様なのですが、原文の意図は、「システムを利用可能なライセンス」という意味でした。
原文が長い文章ではなく、短文で構成された申込書だったので…仕方ないですね。
(疲れていて、前提などをあまりきちんと伝えていなかったもので…、自分で確認してよかったです)
そういうことも考慮のうえ、翻訳を依頼すればきっと意図したような翻訳に仕上げてくれるでしょう。
(ある意味、部下に仕事を振るのと同じ様なイメージで使用すれば良いかと思います)
生成後のチェックはどうする?
上記のエピソードとも関連しますが、リアルタイムの翻訳が必要なシチュエーションでなければ翻訳をしてもらった後で、「チェック」をすることをお勧めします。
私は、自分でベトナム語を読み、気になるところを部分的に確認するようにしています。
しかし、読者の皆さんが全員ベトナム語を理解できるわけではないと思いますし、単語単位でのチェックには時間がかかります。
そのため、簡易チェックとしては、翻訳された内容(ベトナム語)を別の生成AIや翻訳サービス、例えばGoogle翻訳に入力して、それを日本語訳してもらえば良いかと思います。
私もそうしています。(自分のベトナム語も怪しいので…(^^;)
日本語訳の内容が怪しければ、その旨をAIにフィードバックしても良いと思いますし、時間がなく、かつ致命的でなければとりあえずその翻訳を採用するのも良いかもしれません。
スマホアプリを活用
AIサービスはスマホアプリが配信されているものもあります。
上記のChatGPTもそうです。
2024年の春に発表されたChatGPT4oのスマホアプリのデモは反響が大きかったですよね。
本記事執筆時点ではまだ上記のデモを実行できるサービスはリリースされていない様です。しかし、あそこまでできる様になれば、本当にリアルタイムの通訳の役割を担ってくれそうです。
その時にも上述したようなシチュエーションを与えることをすれば、状況に合致した翻訳をしてくれるものと思われます。
DeepLも有望株だと思っています
生成AIではありませんが、翻訳サービスということでご紹介するのが、DeepLです。
こちらのサービスは結構有名なので、使われている方も多いかと思います。
本記事執筆時点の2024年7月時点ではベトナム語には対応していません。
ただ、日本語から英語への翻訳はできます。
ベトナムでもホテルや外国人向けのレストランでは英語が普通に通じるところも多くなってきています。
また空港であれば英語は絶対大丈夫ですよね。
こういうところで緊急事態が発生した時に活用できるのではないかと思います。
本記事のテーマである生成AIとは少し異なりますが、まだ使ったことがないという方はぜひ一度お試しください。
まとめ
生成AIの翻訳への活用についてまとめました。
本サイトの読者の多くは初めてベトナムに訪れる方や、現地視察目的で短期出張されると言う方だと思います。
そのため、実際のところは生成AIを使った精度の高い翻訳が必要になる場面は少ないかもしれませんね。
どうしても失敗できない場面、つまり誤って通訳されると困る場面や、どうやら通じていないなと思った際のお守りとして、
こういう方法もあると捉えておいていただければと思います。