『 We are not here to think, We are here to act. 』
私たちは考えるためにここにいるのではなく、行動するためにここにいる
この言葉は本EXPOのスローガンで、「地球環境問題に早急に取り掛からなければいけない」という強い想いが伝わってきます。
今回は2020年1月30日から2月2日の3日間、パリのシャンゼリゼ大通りに面する展示会場「グラン・パレ」で開催された地球救済EXPO『Change Now(チェンジナウ)』のレポートをお送りします。
グラン・パレ(展示会場)
会場自体はそれほど大きくはありませんが、クオリティーの高い(=食やアートなどフランスのイメージをよくする)展示会が開催される場所です。
EXPOの概要
- 1,000の解決案(出展やトークイベント含む)
- 500社からの投資事業
- 120カ国からの参加
- 2万人以上の参加者
- 13,500平米のサミット
- 3つのワークショップ開催
- 5,000のミーティング&ネットワーキング
- 雇用斡旋、映画祭、ファッションイベント、投資家を集めたディナー等
出展ブースのカテゴリー
- 海洋環境&プラスティック
- アグリテック(農業)
- エコロジカルラッピング
- 意識改革
- クリーンエネルギー
- モビリティー
- サステナブルファッション
- 都市緑化
mobility
モビリティ
「Rogervoice」
耳が不自由な人のために作られた音声解析を用いたチャットシステムと手話ビデオ通話システム。目や耳が不自由な人のためにも健常者と同様なサービスを提供しなければいけない、という法律が2017年に樹立されました。それに合わせて開発されたシステムです。
フランス国鉄が運営するオンライン予約システムで2020年春に提供が開始される予定。フランス国鉄は民営資本が導入されてから乗車券販売を行うだけではなく、多様なサービスを提供しています。例えば、10年程前に大規模ストライキがあった際に電車の運行機能が麻痺したため、シェアリングカーサービス利用者が著しく伸びました。その中で頭角をみせたのが「blablacar」という会社です。車を運転するドライバーが相乗りを提供するサービスで、社交的なフランス人の間では人気を集めています。同社は現在、フランス国鉄の傘下となりました。「Uber」ではありませんが、同様の配車サービスを提供する企業もフランス国鉄の傘下になっています。サービスの多様化に伴い、今後は障がい者へのコミュニケーションサービスを提供する予定とのことでした。
「Zéphyre」
電気自動車使用者のために電気供給塔を開発&販売する会社です。
これまでは車と高電圧の電気供給会社と電気供給ポイントというのはセットで売られていた関係で、各部門の癒着等が見られました。すべてのインフラが整わないと電気自動車の運営は成り立たないため、電気自動車の販売数がそれほど伸びなかった、という背景があります。「zéphyre」はあえて独自の電気供給システムを導入することで、電気自動車業界の発展を促そうとしています。
ターゲットは家と会社が30km以内にあり、かつ平日に通勤が必要な人(=車利用者の7割)。
「Zeleros」
時速1000キロの乗り物ハイパーループを開発する会社
新幹線と飛行機が拮抗する距離(500〜1500km)の移動に最適な乗り物としてハイパーループを開発しています。5年前にイーサン•アイロンがおこなったコンクールで賞を獲得したスペインの大学研究機関が元となるスタートアップです。500km未満の場合は高速鉄道でもさほど時間はかかりませんが、1500kmを超えると設備投資負担が増えるため、ミドルディスタンスの移動により最適なエコロジカルな乗り物として開発されました。
磁気浮遊型高速移動は空気圧が問題となり速度に限界があります。同社が開発している乗り物は磁気浮遊し、真空圧の中を走るため、時速1000キロ近くに達することができるそうです。
2021年初めに走行実験を行う予定で、実際に走行するのは2030年頃を予定しています。日本からの投資を希望していました。
「energy observer」
太陽光、風力、海水の化学分解の3つをバランスよく使い、稼働させる船です。船には海水を真水にするシステムを搭載し、その真水を科学分解させて空気を作り出し、作られた空気圧から発電するというシステムをとっています。空気をさらに科学融合させて熱を発生させるシステムも併せ持ち、空調等に利用できます。開発当初は太陽発電に頼っていたそうですが、科学分解による発電が効率化できたため、今年はフランスから北極まで移動することができました。「zeleros」という風力を利用した運送船を作る会社のブースもありました。
energy
エネルギー
「Saurea」
太陽光発電モーターを開発している企業。電気を使わず、灌漑(地下水を汲み上げる)、規模の大きな工場等へ風力を送る、または魚の養殖に必要な水流を作ることを可能としています。
「élecocité」
クリーン・エネルギーに対する政府からの助成金を利用したリーズナブルな電気を配給する会社です。クリーン・エネルギーは政府からの助成金等をもとに安価に利用できるため、利用する人が増えています。消費者はクリーンエネルギーだからという理由でクリーンエネルギーを選ぶわけではありません。彼らはかつて独占企業だった国立型電気会社と対抗するべく、政府援助のクリーン・エネルギーを一部取り入れ、今までよりも安い電気代で消費者に提供しています。
「celsius」
空気中で熱せられた(もしくは冷やされた)水を地下へ戻し、温度を安定させてから地上に戻すというクローズトな循環システムを提供しています。地下にはサッカーグラウンド規模の配管をはめぐらせる必要がありますが、地下に戻す水は年間を通じて15度程度になるため冬は温かく夏は涼しく感じられる水を供給できます。また、空調に使われる70%を削減が可能です。
「eel energy」
魚の動きをヒントにつくられた発電機で、波を動力に発電するシステムをとっています。浅瀬(=島等の発電ポイントが少ない海辺、または山奥の川辺)等で発電が可能という特長があります。
「climespace」
1991年、環境サミットが始まって間もない頃のパリはすでにインフラ投資をはじめていました。その一環で市内地下に低温度水を張り巡らせて空調に利用するという設備を手掛けている企業です。現在は市内の中心地にあるオフィスやレストラン、行政施設が集まるエリア、美術館や図書館等の空調設備に利用されています。空調利用を抑える目的があり、市内に設備を網羅するという目標を掲げています。
others
その他
「panctonid」
大量にマイクロアルジェを生産できるシステムを販売している企業です。マイクロアルジェは人間または家畜の栄養サプリメントとして優秀かつバイオエネルギーやスキンケアプロダクトにもなるという藻(プランクトン)の一種です。藻が光合成をするのでCO2の削減になる=環境に良いという利点があります。今まではマイクロアルジェの大量生産が困難でしたが、水槽に光を取り込むシステムを開発したため、大量生産が可能となりました。マイクロアルジェを使用した海水を濾過するシステムも同時に開発しています。今年はマイクロアルジェを使用した100%自然なプラスチックを開発しています。
近くのブースでは小規模サイズではありますが、マイクロアルジェ培養を可能とする水槽のようなものを販売しているブースもありました。彼らは工場等のCO2排出の多い企業に購入してもらい、環境に良くないと思われている企業のイメージアップに貢献できたら、という思いで開発したそうです。
「greenmood」
コケで作られた防音パネルを販売する企業です。防音パネルの見た目は鮮やかなグリーンで美しく、管理はほぼ必要なし、10年ほど耐性があります。100%自然由来の防音パネルです。北欧のコケを特殊なプロセスで半死状態にした上で作られているそうです。キノコやその細菌で作られた家具を販売する「kroum」という企業もありました。
「citéo」
ゴミ分別を推進する団体。フランス国内の地方団体と提携している国内最大の機関です。ゴミ分別を理解させるため、ゲームによる教育を行っています。具体的には、一般的な(そしてゴミでちらかった感じの)アパート風ボックスに入り、専用端末を使って周辺にあるゴミをしっかり分別できるかを○×ゲーム方式で選択させる遊びを提供しています。
「Beyond meat」
豆やビートなどを混ぜた植物由来の人工肉を開発した企業です。アメリカやカナダ等で販売されており、フランスでも販売が始まりました。CO2を多く排出する産業として畜産業が問題視されいる昨今。畜産業は食肉用の土地を確保するために森林を伐採し、家畜の餌として穀物や水資源も大量に消費します。牛のゲップや排泄物からは多くのメタンガスが排出されます。植物性タンパク質で作られたフェイクミートは、動物を屠殺せず、環境にも身体にも良いとされており、ここ数年急速に市場を拡大しています。
このように、フランスの多くの企業は地球環境の問題に真剣に向き合い、弛まぬ努力を続けている印象を受けました。デジタルトランスフォーメーションの流れの中、この10年で世界は大きく変わりました。この先の10年は更に変化のスピードが早く、今までの概念を覆すパラダイムシフトが起きると言われており、そのカギを握るキーワードのひとつが「サスティナビリティ」となります。CO2回収技術の発達により、二酸化炭素が新しい通貨になるかもしれません。10年以内に幹細胞から培養された肉が普及し、動物を屠殺から救い、地球の熱を下げてくれるでしょう。
このイベントで、私たちも今すぐに行動しないと後戻りできない状況にあるのだと気付かされたと同時に、まだまだビジネスチャンスがあることも実感しました。
パリは世界でも気候変動の問題に熱心に取り組んでいます。
その様子を一人でも多くの人に知ってもらいたいと思い、ビズトリでは「パリ・サスティナビリティ視察ツアー」を通年で開催しています。ぜひ一度ご参加ください。
フランス(パリ)サスティナビリティ視察ツアー
https://biztrip.jp/tour/paris/
その他のパリ視察ツアー
VIVA TECHNOLOGY 2020(ビバテクノロジー2020)視察ツアー
https://biztrip.jp/tour/vivatech/