なぜ日本のスポーツ産業は1990年代から横ばいなままにも関わらず、米国のスポーツ産業は当時から3倍にも伸びたのでしょうか。
米国スポーツ市場規模は90年代では15兆円~20兆円だったのにもかかわらず、今では60兆円規模にまで伸びています。一方で日本のスポーツ産業規模は20年前の6兆円から現在もずっと横ばいです。
日米のスポーツ市場に10倍ほどの差が出てしまった理由は何なのか、日本の国民性やカルチャーとだけでは片付けることのできない様々な理由を学びに現地スポーツエンターテイメントを視察しました。
本ツアーは2019年9月某日、米ロサンゼルスにて、NFL LAラムス、MLB LA エンゼルス/LAドジャース、MLS(サッカー) LAFC、NCAAフットボール USCトロージャンズの試合とその裏側を視察し、それぞれどのようにビジネス化、エンタメ化されているかを学びました。
本当の意味での「スポーツ&エンターテイメント」をVan Wagner社に解説してもらいながら視察するものです。同社は30年間、世界のスポーツエンターテイメント産業をリードしてきました。オリンピックやNFLスーパーボウル、世界TOP10の大会、世界有数のプロリーグ、チーム等にスポーツプレゼンテーション、ビデオ製作、デザイン設計、コンサルティング等をフルサービスで提供しています。
====日程====================================
1日目 午前 Van Wagner社にて講義
夜 NCAAフットボール USCトロージャンズの試合とその裏側
2日目 日中 メジャーリーグサッカーLAFCの試合とその裏側
夜 MLB ドジャースの試合とその裏側
3日目 日中 NFL LAラムスの試合とその裏側
4日目 夜 MLB LA エンゼルスの試合とその裏側
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Day 1
・Van Wagner社
Van Wagnerロサンゼルス支社を訪問し、今後のスケジュールなどのオリエンテーションを実施したのち、各試合での観察すべきポイントをまとめていただきました。また、各チームやリーグとしての立場など基本情報とともにアメリカのスポーツ産業のトレンドなどの講義などをうけました。
・NCAA フットボール
USCトロージャンズ
南カリフォルニア大学(USC)のアメフトチーム、USCトロージャンズの本拠地であるLAメモリアルコロシアムを訪問視察しました。本スタジアムは1923年に開場した非常に古い施設で、1932年と1984年のオリンピックの会場ともなった歴史あるスタジアムです。
100年弱の歴史がある本スタジアムは何度もリノベーションを繰り返し、訪問時にも大規模改修を実施中でした。本スタジアムは建物の古さもあり、歴史を感じられましたが、とにかくしっかりと統一された演出関連のシステムインテグレーション、さらに緻密に計算されたファンファーストの通信配置設計や観客席の設計、すべての構造に「なぜ」がしっかりと計算されているつくりとなっています。
それが故、改修中の間でも最大限ファンが楽しめる空間づくりとそのチームを支えるスポンサー企業との結びつきを強く感じられる理由があることを具体的に学ぶことができました。
さらに、米国では1位のNFL、2位のMLBについて3位の人気を誇るNCAAフットボール。カレッジビジネスがなぜここまで大きなビジネスになるのか、その裏側で働く現場の人間の声をヒアリングしながら学びました。
Day 2
・MLS (サッカー)
LAFC
2018年MLSに参入した新しいサッカーチーム、LAFCの試合、施設、運営の裏側を視察しました。
ホームスタジアムであるバンクオブカリフォルニアスタジアムも同2018年に開場しました。本チームは有名セレブリティや元有名スポーツ選手に所有されていたり、日本では見ることのないファンとチームとの距離感であったり、新鮮で効率的なスポーツチームの在り方、スタジアム作りが行われています。
熱烈なファン、にわかファン、若者ファン、選手、オーナー、スポンサー、プレス等、試合に関わる人々がそれぞれ何を最も求めているのか、それをとことん追求したスタジアムの設計です。
さらに、スタジアム命名権を獲得した企業の名前がいたるところで見受けられ、企業とともに作り上げられていることが物語られます。
なぜ日本の命名権ビジネスが世界から非常に後れを取っているのか、その理由を解説いただきながら改めてスタジアムを見回すと、成功の理由がおのずと見えてきます。また、できたばかりの新しいチームだからこそ、地域特性を生かし、ハリウッドの「ウォークオブフェイム」を模したヒストリー板がスタジアム周りに埋め込まれていたりと、新規ファンの地元愛を盛り上げる仕掛けがなされているため、より一層タイトなファンが増えるのだと実感することができました。
・MLB
LA ドジャース/LAエンゼルス
前田健太選手(当時)所属のLAドジャース、そして大谷翔平選手所属のLAエンゼルスの試合、施設、そして運営の裏側を視察しました。
ドジャースの本拠地であるドジャースタジアムは、1964年に開場したMLBで3番目に古いスタジアム。また、LAエンゼルスの本拠地であるアナハイム球場は、1966年に開場したMLBで4番目に古いスタジアムです。
そんな古さを感じさせないほど球場は定期的にリノベーションを繰り返し、最新のビジョンやLEDリボンボード等はもちろん、最新の音響設備、特別感に満ちたVIPルーム等、常にファンがワクワクできる仕掛けが詰め込まれています。新設するのではなく、歴史と共に繰り返しリノベーションしていく米国らしい球場です。
なんといっても一歩足を踏み入れてからの異世界へ訪れたかのような明るくワクワクする空間は非常に米国らしさが滲み出ています。また、日本だと試合の間に流れるTV CM等、スポンサー企業だけがハッピーな演出が多いですが、スポンサー企業との取り組みにもすべてエンタメ要素が盛り込まれており、球場に訪れるすべての人が楽める空間づくりがなされています。また、席を離れなくてもフードを注文できたり、席を離れていても試合をキャッチアップできたり、どの席に行けばいいのかが一目瞭然であったり(案内表示があります)、スマホの充電器やATMが設置されていたり、とにかくファンにとってストレスがない環境づくりが徹底されています。
Day 3
・NFL
LA Rams
訪問時は新スタジアム建設中のため(※)、初日に訪れたUSCトロージャンズのホームスタジアムであるLAメモリアルコロシアムでの試合となりました。米国スポーツ人気No.1スポーツであるNFLのLAラムスを視察。
※建設中のホームスタジアムであるSoFiスタジアムは、米国で最も高額な費用をかけたエンタメ施設で、4K大画面、5G、Wi-Fi6等、最先端のテクノロジーが詰まった複合施設。2020年7月にオープンするそうです!
試合の盛り上がりはもちろんなのですが、何といってもファンが独自で展開しやすく、そしてスポンサー企業も集合した前夜祭的なテイルゲートが非常に魅力的です。色も音も匂いも、味わいも、実際に触れたり体験できたりと、五感すべてに響くようなこのイベントでも莫大なビジネスを生むのです。ここで「試合の序章」であることをファンに実感してもらい、さらに試合を盛り上げていきます。このような心躍る演出が、「また観に行きたい」とファンに強く印象付けているのです。
さいごに
様々なスポーツを様々な角度から視察すること、さらに、実際に第一線で活躍されている関係者から解説してもらうことで、表面からは見ることができないポイントを多数習得することができます。日本でも非常に有効なソリューションとして提案できる内容のものが多数見つかりました。